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第6回 「好奇心」

開催日時
平成26年7月18日(金) 14:00~17:00
討議テーマ
「好奇心」について
開催場所
東京ウィメンズプラザ
参加者
下山、望月

討議内容

今回は、「好奇心」と題して議論した。現在この地球上には、約70億の人間が、様々な地で生活しているが、その人間は、7万年ほど前にアフリカを出たわずか数十人の人間にルーツを持つといわれている。そして、その人間のある集団は、ユーラシア大陸の西、現在のヨーロッパの地に向かい、また違う集団は、東アジアの地に向かい、やがて日本、そして、新大陸へとその居住地を移し、世界中へと広まっていった。この人間の移動を促した源には、人間の抱く好奇心があったのではないだろうか。コロンブスのアメリカ大陸発見にしても、飽くことなく進められている宇宙の探索にしても、そこには人間の抱く好奇心が働いてきたことは間違いなかろう。では一体、その好奇心とはなんなのだろうか。

 下山さんの趣味の一つは、自転車でいろいろな地を訪れることだが、なぜ自転車に乗るのが楽しいのかというと、まだ行ったこともない地を探索することにあるという。よく行く場所であっても、新たな発見が楽しみを倍加させるらしい。この下山さんの趣味一つをとっても、そこには好奇心に根ざした人間の行動がある。そして、見えてくることは、未知なる世界への興味をくすぐる力としての好奇心である。先のコロンブスのアメリカ大陸発見にしても、宇宙の探索にしても、そこには未知なる世界を明らかにしたいという好奇心がある。

好奇心と同じように、未来に向けて人間を行動に駆り立てるものに夢があるが、夢と好奇心とでは何がどう違うのだろうか。好奇心も夢も、人間に行動の動機を与えるものだが、好奇心が、未知なる世界をターゲットにするのに対して、夢は目指すべき目標がはっきりしていることだろう。そして、この二つが、人間社会の発展に大きくかかわってきたことが分かってくる。好奇心は、自然の不思議さを明らかにしたいという思いから科学を生み出し、夢はそうした科学が明らかにしてきたことを基盤にして技術を作り上げてきた。物質は何からできているのだろうかという好奇心が、原子の世界を明らかにし、そうして作り上げられた量子力学を基盤にして、様々な科学技術を生み出してきた。私たちが日常当たり前のように使っている携帯電話にしても、パソコンにしても、TVやラジオにしても、科学を基盤にした技術者の夢から生まれてきたものだ。

好奇心と同じような意味を持つ言葉として探求心がある。科学の発展の陰には、好奇心と同時に探究心がある。好奇心と探究心とは何がどう違うのだろうか。好奇心も探求心も、共に未知なる世界を明らかにしたいという欲求に基づいているが、探求心の方が、好奇心よりも知的なかかわりが深いように思われる。好奇心は、どちらかというと未知なる世界に接し、反射神経的に行動するのに対して、探求心は、未知なる世界に接しながら、その未知なる世界を知恵によって深く掘り下げていくという知的な営みが強い。だから、コロンブスをアメリカ大陸発見の船旅に駆り立てたのは、探求心というよりも好奇心の方が強かったのであろう。これに対して、人間を科学の世界に駆り立ててきたのは、好奇心よりも探究心の方であろう。

では、この好奇心というのは、人間だけに与えられたものだろうか。動物や昆虫には好奇心はないのだろうか。犬や猫のふるまいを見ていると、それらが好奇心に動かされていることが見えてくる。ボールとじゃれあう犬にしても、小さな穴に首を挟まれているネコの行動にしても、そこには好奇心が働いているように思える。そして、この生物一般にあると思われる好奇心こそ、生物の生命維持に欠かせない力ではないだろうか。というのは、その力によって生物は餌を求め、餌を得ることで生命を維持することができているからだ。

この生命維持としての好奇心の存在は、人間においても同じであろう。文明化されてしまった現代人にはわからないことだが、原始時代の人類にしても、今でもアフリカの地で原始時代そのままのスタイルで生活している民族にしても、その日常生活のほとんどが糧を求めての生活であろう。その彼らが、獲物を追い、果実のある場所を求めて動き回るのは、好奇心の働きに負うこと大であろう。

ただ、人間にはそうした生命維持のための好奇心の他に、未知なる世界を明らかにしたいという精神と深く係わった好奇心がある。宇宙の探索にしても、原子や分子の探求にしても、そこには好奇心が働いているが、その好奇心は、餌を求めて未知なる世界に駆り立てる好奇心とはどこかしら異なっている。この人間が抱く精神世界と深く係わった好奇心は一体何のためにあるのだろうか。探求することによって新たに生まれてくる謎、その謎に対してなぜという好奇の心が生まれ、それによって探求する心に火がつけられる。謎が新たな謎を生みながら、その謎は一体人間をどこに向かわせようとしているのだろうか。

宇宙の探求にしても、原子や分子の世界の探求にしても、今科学者が暗黙のうちに求めているのは、生命そのものの在処である。この地球上に花開いている生命の営み、その中から人間は誕生してきたのだが、その人間を生み出した源は一体何なのか、人間の抱く好奇心は、生命を維持させようとするためのものと、その生命の源を人間自身に覚知させようと働く力のように思われる。

次回の討議を平成26年9月26日(金)とした。       以 上

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