- 2009-02-07 (土) 17:10
- 2009年レポート
- 開催日時
- 平成21年1月30日(金) 14:00~17:00
- 討議テーマ
- 意味
- 開催場所
- 東京ウィメンズプラザ
- 参加者
- 土岐川、下山、松本、吉野、大瀧、矢島、脇水、望月
討議内容
今回、新たに脇水さんが参加してくれました。脇水さんは、現在ベルシステム24に勤められていますが、昨年までは、大学院で、ドイツ史について研究されていました。ドイツに何年か生活していたこともあり、ドイツ語はもちろん、ドイツの歴史や文化について豊かな知識をもたれています。多彩な体験で培われた考えをこの場で大いに披露されることを期待しています。
今回は、「意味」と題して議論した。議論をはじめる前は、意味については、あまり豊かな議論が生まれてはこないのではないかと思っていたが、予想に反して、終わりのない議論が繰り広げられた。先ず、意味の持つ意味を考えていくと、それには大きく三つの意味が含まれている。一番頻繁に用いられる意味としては、言葉の意味としての意味で、それは、言葉の内容、ある言葉が表わしている内容といったものである。これは、意味の持つ意味の最も分かりやすい内容である。
二つ目は、その色の意味は何、その記号の意味は何、という表現で現される意味である。それは、イメージであるとか、シンボルといった言葉に置き換えることができる。デザインといわれるものも、そのデザインが物語っている内容を意味として表現できる。映画の中に挿入されたある映像の持つ意味といった意味も、この意味に属し、先の言葉の内容が、論理的な意味であるのに対して、感性的な意味と表現できるかもしれない。論理的に表現してしまうと、なかなか全体を表現できないものになってしまうのが、このイメージと係わった意味である。赤信号は止まれを意味し、緑信号は安全を意味している。そうしたシンボルとかかわった意味もこの意味に属してこよう。
三つ目は、生きる意味とか、そんなことやったって意味がないといった表現に用いられる意味で、それは、目的とか価値といった言葉に置き換えられるものである。これは、先の二つが言葉の内容やイメージの中身といったように、言葉やシンボルといった対象物の示している内容そのものとかかわっているのに対して、さまざまな人間行動に対する価値付けであり、意志と係わったものである。
これら三つの意味を理性、感性、直感という人間の持つ能力と関連付けて考えてみると、一番目の意味は理性と深くかかわった意味であり、二番目の意味は感性と係わった意味になる。そして、三つ目の意味は、直感と深くかかわった意味というように表現できるであろう。
一番目の理性と係わった意味は、人間だけが持つ意味であるのに対して、二番目の意味や、三番目の意味は、生物全てが持った意味と考えられる。たとえば、二番目のシンボルと係わった意味は、生物の中で繰り広げられる情動行動に多く見られる。異性の注目を引くためのさまざまな行動は、情動的な意味を内に秘めている。もちろん、そうしたものを言葉で表現した意味は、人間だけの意味なのだが、そうした意味が意味する内的世界は、生物一般に抱かれているものである。
人間の抱く生きる意味としての意味が持つ内容は、直感と係わり、それは、人間の歩むべき道を指し示しているもの、あるいは人間が生きるべき方向への引力ともいえる。生きることの意味を求めるのは、人間の本能的行為であり、その本能的な営みは、全ての生物に与えられている。蟻、蜂、蜘蛛といった生物の巣作りにしても、それは本能によって与えられているものであり、その本能行為が、蟻や蜂にとっての生きる意味であろう。
以上のように、意味には、人間の理性、感性、直感と係わった内容がこめられていて、そのそれぞれに対して、人間は、無意識的にこの意味を使い分けているといえよう。そして、この理性、感性、直感と心の世界は深くかかわっていて、理性、感性、直感となるに従って、心の深層へと向かっていくことがわかる。そして、理性や、感性といった、心の表層、あるいは比較的表層に近い心の世界と係わった意味に関しては、個人個人で納得のいく答えを得られるけれども、心の深層とかかわる意味に関しては、なかなかそのものをとらえることは難しくなってくる。それは、心の表層と係わる世界は、人間の意識的意志と係わった意味内容であるのに対して、心の深層と係わった世界は、人間の無意識的意志と係わったものであるからである。そして、この無意識的意志とかかわったものを動物たちは本能として、自然の命ずるままに行為に表わすことができているのに対して、人間は、その無意識的意志と係わったものを理性的なものでとらえようとするから、なかなかとらえることができず、その意味を求めようと右往左往することになる。
いずれにしても、意味という一つの言葉に、大きく三つの異なった内容が秘められていて、それを人間が無意識的に使い分けているという所に、人間のもつ無意識に秘められた力、それは直観力とでも表現できるが、その力の偉大さを改めて思い知らされたような気がする。
次回の討議を平成21年3月27日(金)とした。 以 上
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