- 2005-04-08 (金) 0:48
- 1990年レポート
- 開催日時
- 平成2年11月7日(水) 14:00〜17:00
- 開催場所
- サントリー株式会社 東京支社
- 参加者
- 古館、多田、諏訪、佐藤、望月
討議内容
始めに、お断りとして、この討議内容報告は、議事録ではなく、参加者の意見を基に、私なりにまとめたものです。私はそうは言っていないとか、その考え方はおかしいとか言ったものもあろうかと思いますが、その点は次回のテーマとして自由に討論していただこうと思います。このメモは、私の一人メモを皆様方に配布していると考えていただいて、文責はすべて望月一人にあることをお断りしておきます。
人間文化研究会の第一回目として、「人間の心の不易について」と題して検討した。始めに、メンバー各自の自己紹介を行った。自己紹介は、自分の生い立ち、趣味、人生観等も交えて行われた。これらの自己紹介を通して浮き彫りにされた人間の心の不易は以下の通りである。
不易的なことを行う人は、その時代には、直接企業に利益をもたらさないため、企業の中では認められることが少ない。不易なものを生み出すプロセスと、企業の理念とは相反するものがあるのかも知れない。これとは対象的に、個性の重視という時代感覚にあった自動車を目指した日産のBe−1やPAOの開発は、一時的には企業イメージを変革させ、社内の考え方を革新的なものに導いたのかも知れないが、長期的にみた場合、日産という企業にとって、はたして成功であったのかどうかが問われることになってきている。ここにも、企業と不易流行の関係が現れていると思える。
ディズニーランドの長年における人気は、人間の心に普遍的に流れる純粋で、真実なものを巧みに表現し得ているところにある。イッツ・ア・スモール・ワールドには、時代を越え、国境を越えた、子供の純粋無垢な気持ちが表現されている(多田さんのディズニーランド調査研究報告にその辺のところが詳細に報告されているとのこと)。
我々日本人は、GNPは年毎に増加の一途を辿っているものの、本当に幸せであると胸を張って答えることができない。そこには、企業の利益と生活者の利益との食い違いがあるのではなかろうか。
若者の間にも、年輩者の問にも、ボランティア活動に取り組む人が多くなっているが、その動機の一つには、生きている間に何か良いことをしてみたいという気持ちがあるようだ。
人類の進化を見た場合、科学の進歩に比較して、精神が進歩していない。目に見える具体的な科学技術にとらわれず、日本人は、生活に密着した日本古来の伝統に目を向け、国際化時代における日本の特徴をあらためて見直してみる必要がある。また、男性も、女性も、それぞれのアイデンティティをしっかり持つべきである。
男性と、女性とを比べた場合、女性の方が、人生に厳しいのかも知れない。なぜならば、出産や子育ては、女性ににとっては初めての経験であり、直面する問題をすべて自分で解決していかなければならない厳しさがある。これに対して、多くの男性の場合には、先人達によって作られた道を少々変更したとしても、その道から大きく外れることもなく歩んでいるだけである。
親が、子供に対して、一言で親の仕事を説明できない時代になってきている。それは、今までのように、具体的に分かりやすい物を生産する時代ではなく、企画やサービスなど、精神的な面での仕事が増えてきていることの現れであるのかも知れない。
水は、人間の生活の最も根本になっているものであるが、釣りを通して教えられることは、水が汚れ、魚が汚染されてきていることである。そして、これらの環境を汚染している源は何かとただしてみると、結局、人間の心の汚れに帰してしまう。日本人の心を浄化していたものは、日本古来からの神道ではないだろうか。神道は、環境を構成しているもの全てを神格化し、環境を清く保つこと、生きとし生けるものの命を大切にすることを書としてきた。日本人の心から、神への敬けんな気持ちが失われてしまっていることが、環境汚染に結び付いているのかも知れない。
音楽を通して、20世紀後半を見ると、そこには、1950年代、60年代に制作されたものが一番魅力的であるという印象がある。何故なのかを分析するには、複雑な要素が影響していて単純には決めかねるが、そこには、時代的背景と共に、人間の中に流れる宇宙的リズムの影響を感じる(マヤ文明は、宇宙のリズムから、文明の寿命を約256年と把握していて、その周期で、今までの文明を捨て、新しい文明を作っていったと言われている)。
最近の傾向として、人間の感情を表す喜怒哀楽のうち、喜と楽とだけを人々が求めており、怒と哀とを忘れ去ってしまっている傾向にありそうだ。この傾向は、人間が刹那的な快楽主義に知らず知らずに陥ってしまっていることの現れなのであろうか。
これらの意見を基に、人間の心の中に流れる不易的なもので、本研究会で検討可能な項目を列挙すると以下のようになる。
- 人間にとって幸福とはなにか
- 宗教とは
- 自己実現について
- 生と死について
- 愛について
- 生命について
- 文明社会の進展(科学技術)によって人間は何を得、何を失ったか
- 人間の純粋性とはなにか(大人と子供)
- 企業理念と人間の不易性とについて
- 日本文化とはなにか
- 人類社会に果たす企業の役割はなにか
- 生きがいについて
- 人類進化の上で果たす男と女の役割について(精神面上で、男と女は本質的に違うものなのか否か)
- 使い捨ては人間の何を物語っているのか
次回も引続き人間の心の不易性について検討する。また、多田さんのディズニーランド調査研究レポートを基本にして、ディズニーランドの中に流れる不易性についても検討する。
また、この研究会の活動として、人間の不易性と関係のあることを研究していらっしゃる方を講演者として迎え、一緒に討論する場を設けることも提案された。
次回の研究会は、12月21日(金)に予定している。
以上
- 新しい記事: 第2回 「ウォルトディズニーワールドリゾートに見られる人間の不易性」
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