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人間文化研究会20年を振り返って

平成22年12月吉日

望月 清文

人間文化研究会は、皆様のお陰によりまして、開催以来この11月で丸20年を迎えることができました。20年前、当時は、まだバブルが崩壊する以前の経済的には極めて華々しい時期にありました。そんな中で、生きることの意味を模索しながら、人間の内面に秘められた世界を探求してみたいという思いから、異分野の人たちが集まって、一つのテーマについて自由に討論するという、いわば集団哲学の場を作りました。

当時私は、KDDの研究所に所属しておりまして、光の研究から人間の研究へと研究テーマを変えたばかりの時で、文化的な議論のできる仲間を求めて、先ずは、できたばかりのサントリー不易流行研究所を訪ねることにしました。そこで出会ったのが佐藤さんで、佐藤さんのネットワークによって、何名かのメンバーを募り、1990年11月、赤坂のサントリービルで第一回を開催しました。大阪ガスの古館さん、広告代理店の多田さんを核のメンバーとして、それから、月に一度のペースで開催し、身近なテーマを取り上げて議論してまいりました。2カ月に一度のペースが定着しましたのは、5年ほどたってからだったと思います。

始めの頃は、メンバーもあまり多くはいなかったのですが、3年ほど過ぎた頃から、新しい参加者が毎回のように現れてきまして、のべ100名ほどのメンバーになっていた時期があります。実地研究ということでディズニーランドをメンバーで訪れたり、京都、鎌倉そして湘南で合宿することもありました。50回記念大会は、広野さんのご尽力により、早稲田大学の国際会議場で、50名ほどの参加者を迎え、記念にふさわしい会となりました。会の案内看板も、土岐川さんのデザイン力と印刷力とによって、大きくて立派なものを早稲田大学の入口に立てることができました。この会を機縁として、山崎さん、桐さんがその後10年ほどの間、積極的に参加してくださいました。ここ数年は、新たな参加者も少なく、土岐川さん、下山さん、大瀧さんの3名が核になり、時として、15年以上前から参加されている塚田さんが顔を見せてくれて議論するという会になっています。

人間文化研究会の会場も、サントリーの会議室から、KDDの会議室へ、そして、現在開催しています東京ウィメンズプラザへという風に転々と変化してまいりました。討議の後はいつも近くの居酒屋で、語りつくせなかったことを何時間も語り合うことが今でも続けられています。この会は、山形県にも飛び火しまして、今から7年ほど前から、山形県酒田市、鶴岡市を中心にして、年に1回、一泊二日の哲学の会が開かれています。この会では山形県鶴岡市在住の菅原さんに大変お世話になっています。

人間文化研究会の討議内容に関しましては、討議の内容を基本に、私の独断で報告させていただいています。この報告は、メーリングリストに記録されている人たちに送られますと同時に、人間文化研究会のホームページ(http://jinbunken.net/)にも掲載されています。このホームページは、高須さんが土岐川さんのアドバイスのもと、ボランティアで作成してくださいました。今回で136回を迎えますが、過去の討議内容がしっかりと整理されていて、とても使いやすいホームページになっています。また、メーリングリストの管理は、広野さんにお世話になっています。

100回を迎える頃から、これを区切りにという思いがちらついているのですが、20年という重みに、区切りを考えることより、未来を考えようという気持ちになってきております。世の中は、科学技術によって便利になり、快適になってきています。電車に乗っても、街を歩いていても、ケータイを手にする人たちを頻繁に見かけるようになってきています。それだけ、人の関心が、視覚や聴覚といった五感と係わった刺激に傾いてきているということでしょうか。ただ、どんなにそうした刺激が豊かになっても、結局、人は人を超えることはできないものです。人と生まれてきている限り、生きることの意味を考え、死ぬことの恐怖から身を守ろうとすることでしょう。

そうした、1000年も、2000年も変わることのない人間の関心事は、どんなに人間社会が便利になり、物質的に豊かになったとしても、変わることなくあり続けていくことでしょう。そして、そうしたことへの解答は、科学では決して獲得できないものであることにも人は気づいてくることでしょう。如何に生きるのか、それは哲学をすること、知恵を成長させることの中でしか得ることのできない命題なのだと思います。今、日本は、哲学をもたないリーダーによって動かされています。政治にしても、経営にしても、そして教育にしても、哲学を基盤にした信念をもってそうしたことに対峙している人は極めて少ないのではないでしょうか。そうした時代に生きる一人として、これからも、この人間文化研究会を推進していけたらと思います。過去の皆様はもちろんのこと、未来からくる皆さんをもお待ちしています。お世話になった皆様に感謝の思いを伝えるために、つたない私の人間文化研究会回顧録を記さしていただきました。

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