- 2017-09-18 (月) 19:57
- 2017年レポート
- 開催日時
- 平成29年9月15日(金) 14:00~17:00
- 討議テーマ
- 「知能」について
- 開催場所
- 東京ウィメンズプラザ
- 参加者
- 下山、大瀧、望月
討議内容
今回は知能について議論した。近年、人工知能(AI)という言葉がメディアを駆け巡っている。AIがプロ棋士を破ったとか、AIで自動運転だとか、AIが病気を突き止めたとか、AIが小説を書いたとか、とにかく今まで人間しかできないと思われていたものが、AIに置き換わり、AIの方が秀でる分野も起きてきた。こうした中で、改めて知能とはいったい何なのか考えてみることにした。
われわれが知能という言葉で思い浮かべるのは、小学校や中学校で経験した知能検査だ。IQと呼ばれ、IQと頭の良さとの間に相関があるとか、IQが高い人は、成績もよいとか、とにかく頭の良さを判断する一つの物差しとして考えられてきた。では一体、その知能検査というのは人間の能力の何を測定しているのだろうか。もう40年以上も前のことを参加者一人一人が記憶を呼び戻しながら知能検査の検査項目を思い出してみると、それは決められた時間の中での処理能力や判断力を把握するためのものであったことがわかってくる。
そうした検査項目をさらに見ていくと、知能検査の内容が、多くの図形の中から、同じ図形のものを選び出したり、共通する図形を選び出したりといった、パターンに関する認識能力を検査していたり、数値的なものを処理したり認識したりする力であったり、言語とかかわった処理能力であったりする。
こうしたことから考えられることは、知能とは、パターンを認識したり、数値処理の能力であったり、言語の認識力であったりといった個々の能力に加え、そうしたものを素早く処理したり、判断したりする能力ということになってくる。AIがプロ棋士と戦っているのは、人間の持つ記憶力、判断力、分析力といった総合的な能力を人工的に作り出し、かつその処理速度を人間以上に高めていることであるし、犬と猫との違いを判断したり、無数ともいえる画像の中から同じ画像を見つけ出したり、人の顔を認識したりするのに用いられているAIは、人間の抱くパターン認識力を人工的に作り出し、その処理能力を人間以上に高めていることである。こうしたAIの能力から見えてくる人間の知能というのは、一言で表現するなら情報処理能力ということになってくる。
視覚から入る多種多様な情報、聴覚から入る多種多様な情報、そうした情報を人間は用途に応じて判断し分析しているが、そうした情報処理や分析を、人間以上の速さでやり遂げようとしているのが人工知能の目的ということではないだろうか。自動車を人間が運転しているときにも、人間は五感から入る様々な情報を瞬時に判断し、それによって車をコントロールしている。その判断や処理が正しくおこなわれ、それが早ければ早いほど、事故を避けることができる。だから、AIが正しい判断を学習し、そこに人間とは比べ物にならない早い処理能力を発揮していけば、これまで人間のやっていた情報処理の営みは、AIに置き換わっていくことは確かであろう。
ただ、人間は、五感から入る情報だけを頼りに判断しているのではなく、生命の本質とも思える本性的、無意識的に心に浮かび上がってくるものも判断の一要素として用いている感じがする。それは、五感でとらえられるものではないから、科学の目でとらえることのできないものである。この科学の目でとらえることのできないものを知恵と総称しているのではないだろうか。五感を通して、外界から入ってくる情報だけではなく、五感を介することなく、内面から自然に生まれてくる何かがある。情緒であったり、共感であったり、直感であったり、といった雰囲気的なもの、感じるもの、こうしたものは、AIではなかなかカバーすることが難しい人間に秘められた力であろう。
小学校時代、確かにIQの高かった人は、成績もよく、高校、大学へと進学し、一流企業といわれる大企業に入り活躍している人が多い。その一方で、IQはそれほど高くはなく、成績もよくなく、大学にも行かなかった人が、大きなすし店を経営していたり、土建業の社長になっていたり、スポーツの世界で活躍していたり、はたまた芸術の世界で活躍していたりすることが多い。
討論の始めで、直感的に、知能は機械的なものであり、知恵は弾力性のあるものという印象を抱いたのだが、それをもう少し違った言葉で表現すると、知能はハード的で、知恵はソフト的なイメージということになろうか。さらに言葉を変えて表現するなら、知能は文明とかかわり、知恵は文化とかかわっているともいえよう。
こうしたことを考えてくると、AIの発達は、文明の発達には大いに貢献することにはなるだろうが、文化の発達には、手助けになっても、主たる要因にはならないのではないかと思えてくる。そして、AIが発達すればするほど、人間の秘められた能力がよりはっきりと浮かび上がり、その能力に磨きをかけることこそ人間として生まれてきた真の意味であるということが見えてくるのかもしれない。
次回の討議を平成29年11月17日(金)とした。 以 上
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