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第98回 「神道」

開催日時
平成16年7月29日(木) 14:00〜17:00
開催場所
東京ウィメンズプラザ
参加者
塚田、下山、松本、望月

討議内容

今回は、「神」と題して議論した。神とは一体何だろうか。日本人は、八百万の神として、山、川、木、岩、太陽、月、といった自然を広く神として崇めてきた。それらに共通しているものは、日々の生活に密着していて、偉大なるものであるということであろうか。それらは、理屈ではなく、人間の直感がとらえた偉大なるものであり、多分、それらに対して、多くの人たちが共通に畏敬の念を抱いたのであろう。やがて、それらの畏敬の念は、人間に向けられ、人格神となってきた。

これに対して、キリスト教の語る神は、唯一の神であり、その神の使いとして、イエス・キリストがいた。ただ、旧約聖書を見ると、神からのメッセージが記されているが、それは、一人の人の心の内から聞こえてきた神の声である。時として、誰しも、自分自身の心の内から、声にはならない何か予感的なものを感じることがあるが、その声にはならない何かを強く感じる人がいて、それを神からのメッセージとして感じ取っていたのではないだろうか。そして、そのメッセージの送り主が神であり、神は父としての存在となり、その父とのコミュニケーションを通して、様々な活動がなされていくことになる。

一方仏教が説く神は、仏様ということであろうか。ただ、仏様は、キリスト教の神とは異なり、ある高い精神世界を獲得した人を仏様としていて、その高い精神世界は、誰もが到達できる可能性をもっている。したがって、仏教における神様としての存在は、キリスト教における父なる神のように唯一絶対的な存在者ではなく、誰しもが平等に獲得できる精神世界を表現していることになる。

こんなふうに見てくると、仏教国での民族の営みと、唯一神としてのキリスト教やイスラム教の浸透している国の営みとに自ずから異なった世界が展開してきていることが分かる。唯一絶対の存在者としての神を持つキリスト教やイスラム教の浸透した国では、民族の営みが、聖典に書かれた神からのメッセージを基本に統制されてくる。それは、神のために、神の命に従って、といったことが様々な行為の大義となってくる。

これに対して仏教国では、先に述べたように、仏様との係わりが、自分自身の精神世界を高めるためのものであるから、そのための修行としてある種の規制があったとしても、神のために、神の命に従って大義がなされていくということが極めて少ない。
日本人の日常生活には、神と係わった儀式が極めて多い。正月に門松を飾ったり、初詣をしたりというのは言うに及ばず、季節ごとの様々な行事の中に、神とかかわったものが数多く見られる。国技としての相撲にしても、そこには、神事が多く込められている。そして、そこには、穢れを払い、心を清める営みが貫かれているように思える。正月を迎えるにあたって、大掃除をしたりするのも、新たな年を清らかな心で迎えたいという無意識の衝動があるからではないだろうか。また、仏教の世界においても清浄ということが貫かれている。それらは、神の国が清らかな国であり、心を清くすることによって、神の国に近づくことができることを無意識のうちに感じ取っているからなのかもしれない。

これらのことを考えてくると、神とは、客観的な世界の中にあるのではなく、一人ひとりの心の奥に秘められた何かであることがわかってくる。そして、その何かは、日本人が森羅万象に感じ取り、それを神とした畏敬の念と深いかかわりを持っている。その畏敬の念は一体何か、それは、生命そのものではないだろうか。即ち、神とは、森羅万象を貫いている生命の源なのではないのだろうか。その生命の源を、人間になって意識的に感じることができるようになった。そして、その生命の源との係わりから、良心的なこと、道徳的なこと、あるいは儀礼的なことが浮かび上がってきたのではないだろうか。心を清くするということは、その生命からのメッセージを聞き取りやすくすることであり、それだけ生命の源に近づくことになるのであろう。そして、自分の意識できる意志とは別の無意識の世界に存在する意志の声に耳を傾け、その声の主を神と具現化したように思える。すなわち、神とは一人ひとりの無意識の中に秘められたもう一人の自分であり、それは生命そのものである。そして、その無意識の中に秘められたもう一人の自分を具体的な存在者としてイメージの世界で作り上げたものが神なのではないだろうか。

次回の討議を平成16年9月17日(金)とした。
以 上

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