- 2005-04-08 (金) 0:53
- 1992年レポート
- 開催日時
- 平成4年6月17日(木) 14:00〜17:00
- 開催場所
- サントリー(株)東京支社
- 参加者
- 古館、多田、高岡、山田、佐藤、望月
討議内容
今回は古館様の御紹介で、新しいメンバーとして山田様が参加されました。山田様は、(株)アイビックの代表取締役社長で、主として、ライティングシステムや新木造に係わるプランや設計を手掛けられています。その独特な経営哲学や、人生哲学は、今回の討議の節々に現れていました。今後とも末永くメンバーとして、本研究会を盛り上げていただきたいと願っています。
さて、今回も、前回に引続き、情報に係わる事柄について討議した。前回の話の中で、人間が残してきた多くのものは、知識ではなく、知恵の産物であり、そこにこそ本物の情報があるのではないか。そして、日本人が残した妖怪も、日本人の長い伝統の中から、知恵によって生まれてきたものであろうという考え方から、妖怪の発生について始めに討議した。
先ず始めに、多田様から提出された妖怪に係わる報告を元に、妖怪の発生した歴史や、妖怪の生まれてきた人間の意識の構造について報告を受けた。それによると、妖怪発生の根拠の一つとして、都市化によって、今まで無意識に生活の場の中に存在していた自然が意識され、治水工事やその他の開発によって消滅しかかった自然が、聖地であったことを記憶にとどめようとする意図や意識が働いていたということが上げられた。また、もう一つの根拠として、江戸時代においては、都市下層民の生は常に没落の危険をはらんでいて、死の意識が支配的になり、そこから妖怪を生み出すことによって現実へのアンチテーゼとなり、人間性を回復させようとする無意識の働きがあったとしている。(二番日の根拠が、人間が生きて行く上で自然な心の働きとするならば、妖怪的なものの存在を信じられなくなっている現在において、物至上主義、金至上主義の中で、人間性を回復しようとしている現在の人達は、一体何にその無意識の働きを求め、新たなものを生み出そうとしているのであろうか。それは、宗教であり、超能力的なものであり、臨死体験等であろうか。)
妖怪が消えたのは、五感に感じられるものだけを信じる現実主義になってしまっているからなのではないだろうか。そして、五感で感じられるものは、私達の飽くことのない欲求をかりたて、多くの物を作り出し、物至上主義を作り上げてしまった。見える世界だけを現実だとし、見えない世界、感じることしかできない世界を、私達は、知らず知らずに切り落としてきてしまったのかも知れない。そして、その反動で、見えざる自然の力は、科学でも捉えることの出来ない、しかし、どこかしら科学的な超能力や気功への関心を高めているのかも知れない。科学が外の世界、見える世界を記述するものであるとするならば、気功的なものは、内の世界、見えない世界を記述していると言えよう。
情報と言うのは、その定義は別として、私達の心に何等かな形で働きかけるものであろう。従って、同じ情報でも、それを受け取る人によって全く異なったものになる。日本のお母さんは、子供に初めてお母さん(お母さんを認めたということでYES)と呼ばれたときが一番嬉しいといい、アメリカのお母さんは初めてNOと言われたときが一番嬉しいと言う。何が善であり、何が悪であるのかは、それを受け取る人の心次第でどうにでもなってくる。この受け取る人の価値観や、考え方まで含めて情報とするならば、溢れでる情報に囲まれ、その情報を得ることに躍起になることよりも、先ずは、自らの心をよりよいものに開発する必要があるのかも知れない。
コーヒーを飲みながら、このコーヒーの豆は一体どこの土地で育ち、一体どの様な人が収穫し、どの様なルートでここまで来たのだろうかなどと考えると、一杯のコーヒーから多くのイマジネーションが生まれてくる。これに対して、ご飯を食べているときなど、お金に換算して、もったいないから残す残さないと考えることもある。前者は、人への感謝や思いやりの心を生み出す無意識の世界に根ざしているのに対して、後者は打算的な意識の世界に根ざしているといえよう。先ほどの心の開発は、無意識の世界に根ざすイマジネーションを豊かにすることであり、それは、飛び交う情報から解放され、全く情報の入らない時間を持つことでもある。高度情報化時代においては、飛び交う情報をキャッチすることと、自らの心を磨き上げることの両方が必要になってくるようだ。そして、権威がある人が言うことだからとか、地位が高い人が言うことだからとかとか、マスコミが言うことだからということで、情報を自分の感性で咬み砕き消化することをしないで、鵜呑みにしてしまうことを避けなければいけない。
これ以外、宇宙のリズムは、地理、心理、生理のハーモニーの中にあるという多田理論や、お金や健康だけでは幸福ではなく、相手の喜びがあって本当の幸せが感じられるのであるといった山田様の人生訓なども披露されました。
次回のテーマとして、見える情報ではなく、見えない情報とは一体なんであるのか、また、それを阻害しているものは一体何であるのかを取り上げることにした。
テーマとしては「見えない情報」と言うことにでもしましょうか。
次回の開催予定日時を7月22日(水)、14:00〜とした。
配布資料
- 妖怪について(妖怪の生まれた時代、他)
- ガス事業新聞 自由席
- 新しい記事: 第16回 「情報(見えない情報)」
- 古い記事: 第14回 「時間と情報」