- 2005-04-09 (土) 22:58
- 2003年レポート
- 開催日時
- 平成15年1月21日(金) 14:00〜17:00
- 開催場所
- 東京ウィメンズプラザ
- 参加者
- 広野、塚田、土岐川、桐、山崎、下山、井桁、板倉、望月
討議内容
今回は、「魅力」と題して議論した。魅力という言葉は、一体どのようなものに対して用いられているのだろうか。メンバーの中には、主として、人間に対して用いられていると考えている者もいたし、いや、そうではなく、自然や動物も含めた全てのものに対して用いることがあると考えている者もいた。それが、どのような対象に向けて用いられるかはともかくとして、魅力という言葉が醸し出す意味には、人が、なんらかのものに引き付けられるという、ものに秘められた力が感じられる。
魅力と美しさには、どこかしら重なり合う雰囲気が込められているが、美しさは、どちらかというと表層的な判断、それによって、人間が動かされるというような力はあまり込められてはいない。これに対して、魅力という言葉には、人の心を引き付け、今まで眠っていた力を引き出すなんらかの力が込められている。ある識者が書いた本からは、確かに知識としての新たな発見や驚きを感じることはできるが、そこに魅力を感じることはない。これに対して、同じような事柄について書かれた本で、識者ではないけれども極めて自然体で書かれた本からは、引き付けられる何かが感じられる。知識だけに価値をおいて書かれた本は魅力的とはいえないが、自然体で書かれた本には魅力を感じるという。
魅力ということを感じるのは、その根底に、どうやら自然体、自然のままというような、自然と深く係わる何かがありそうだ。そして、魅力という言葉によって表現されるものには、美しさによって表現されるような表層的なものではなく、自然体の中から、見る者、聴く者の心を捉え、そこから生き生きとした生命力を引き出すトリガの様な力が秘められているようだ。
私達が、人に対して、魅力という言葉を用いるとき、そこには、美しさとは違った何かがある。たとえ一般的に評価される形態的な美しさがなかったとしても、その人の表情、立居振舞、あるいは、生き方などからあふれてくるものに魅力を感じる。だから、魅力というのは、五感でとらえられるものだけではなく、それらを複合した全体で一つとなる何かであるように思える。人の場合には、単に形態的なものだけではなく、上で述べたように、生き方などに対しても魅力という言葉で表現されるものがある。そこには、人間として、美しく生きる何か理想とするようなものがあるようにも思える。人間にのみあるこの生き方とは対照的に、お金の魅力であるとか、ギャンブルに夢中になっている人にとっては、ゲームが魅力になってきたりもする。また、ペットに魅力を感じたり、自然の美しさに魅力を感じたりと、魅力のカバーする対象は、極めて広いことが分かる。
お金に対する魅力や、ギャンブルに対する魅力のように、魅力の醸し出すものが、必ずしも、人間性、あるいは自然のもつ生命的なものだけではなさそうだ。お金に対する魅力にしても、ギャンブルに対する魅力にしても、そこには、人間の欲や夢などと係わったものがある。夢や希望、それらは、人間の欲と係わっていることが多いのだが、それらをかきたてるものが魅力なのだろうか。こう考えてくると、魅力のカバーするものが、人間も含めた自然との係わりだけではなく、人間の抱く価値観と深く係わっていることが分かってくる。
時の流れと共に栄枯盛衰の激しいファッション的なものにしても、そこには、人間の抱く価値観との係わりから生まれてくる魅力がひしめいている。音楽にしても、流行の音楽にも、クラシックの音楽にも魅力は感じられる。魅力が、必ずしも不易的なものとだけ係わっているわけではない。こう考えてくると、魅力という言葉の中には、幸せという言葉と合い通じる世界が感じられてくる。幸せにも、いくつか種類がある。富を得、快楽にふける世界を幸せとも感じるけれども、それは刹那的な幸せでもある。そこには、世俗的な価値観と係わった幸せがある。その一方で、富も、快楽もないけれども、決して失われることのない、半恒久的な幸せがある。それは悦楽と表現されるものであるが、その悦楽さの中には、悠久な生命と係わる幸福がある。刹那的なもの、それは世俗的な価値観と深くかかわるものであるが、その刹那的なものと係わる幸せと、悠久なものと係わる幸せとがあるのと同じように、魅力が対象とするものにも、刹那的な価値観と係わるものと、悠久なものと係わって人の心を引き付けるものとがありそうだ。そして、お金の魅力に取り付かれるとか、ギャンブルの魅力に取り付かれるといったように、魅力という言葉が、取り付かれるという言葉と重なり合って否定的な意味で用いられることがある。そこには、先に述べたように、魅力というのは、人間をなんらかのものの虜にする力を秘めているということを意味しているのであろう。そして、その虜が、人間性を否定し、刹那的快楽に陥らせる魔力ともなることを暗に表現しているのであろう。このように、魅力という言葉に込められたものは、とにかく、人間を引き付ける力であるが、それが、世俗的な価値観と係わって人を快楽的なものに陥れる魔力ともなるし、悠久な生命と係わって、人を精神的に高めるための導きともなってくるもののようだ。
次回の打ち合わせを平成15年3月25日(火)とした。
以 上